2019年5月22日水曜日

アドレナリンナイトラン50kmレースレポート

大会:アドレナリンナイトラン50km
開催地:アリゾナ州ファウンテンヒルズ🇺🇸
結果:優勝
タイム:4:50:13
距離:50km
STRAVA:https://www.strava.com/activities/2378976125

初ウルトラ距離(フルマラソン以上の距離)
初ナイトラン
初アメリカのトレイルランレース

「初」が多かったレースだが、優勝という最高の形でウルトラランナーデビューをすることができた。

そして、シーズン冒頭で発表した
MTBとトレイルランのウルトラ二種目でトップレベルで活動する新しい肩書き
"ウルトラマウンテンアスリート"
としても幸先の良いスタートを切れた。

今大会はナイトランなのでスタートはなんと午後7時。
眠気防止のために昼寝をしたりしてコンディションを調整。

肌が擦れる場所へのクリームの塗布、膝と足首への「ニューハレ 」テーピング、ライトのバッテリーチェック、取り付け位置、靴の紐の締め具合、補給の確認などを入念に行った。MTBとは全く違うレース準備ということもあり、慣れないながらもできる限りの準備・対策をした。

↓レース会場

ナンバーは4179。とてもアリゾナらしいユニークなデザインのゼッケン。


50kmは私の最長距離となるので、少しでも足をセーブするためにアップはせずにスタートに並んだ。

 ↓コースマップ

↓50kmコース高低差マップ

15kmループ→10kmループ→15kmループ→10kmループの50km。
すべてオフロードで基本はシングルトラックだ。路面は砂礫の砂漠地帯。

↓スタートの瞬間。

MTBの感覚で飛び出すと、ホールショットが決まりそのままシングルトラックへ突入。

昨今のMTBは100マイルなどの長距離でもスタートダッシュは全開に近いので同じようにダッシュしたが、後続が付いてこなかったので少しペースを落とし牽制。

心拍数、パワー、感覚は心地良いテンポペース。ツイスティでアップダウンなシングルトラックでもキロ5分切っているので少し速すぎるかもとペースダウンするか迷う。

湧き上がるハイテンション
目の前に広がるアリゾナのサンセットの絶景
極上のシングルトラックを疾走する快感
加えて初ウルトラレースで先頭を走っている優越感

永遠にでも続いていてほしい幸せな時間にいた。

これ以上のペースアップはしないようにだけ気をつけて、ペースダウンはせずにこのドリームタイムにとどまることにした。正しいかどうかはわからないが、この初めての体感と感覚を味わえるのも今この瞬間だけだ。

最初の登りは、2位、3位の選手が息遣いが聞こえるくらいの位置で追ってくる。

苦手だと思っている下りだったが、まさかの下りで離せるという嬉しいサプライズ。

7時22分が日没。

しかし、目が暗闇に慣れてきていたので安全確保が保てる7:45あたりまでライトをつけずにトレイルを楽しんだ。

そして砂漠の荒野から大きな月が地平線から上がってくる。
息をのむほどのダイナミックな絶景だ。

思わず荘厳な大きな月に向かってYeehaw!!!!と叫んでしまう。
コヨーテが吠える気持ちもわかる気がした。

15kmループ、10kmループ終え25km地点を依然1位で通過。
信じられないくらい気持ちよく快走できている。

スタート・フィニッシュエリアに戻ってくるとすごい歓声で迎えてくれる。日本人で目立っていたこともあったのかもしれないがすごくテンションを上げてくれる。

ドリンクのフラスコ交換もおそらく10秒かからない程度でとてもスムーズにできた。

初のウルトラトレイルランでまさか自分がレースをリードできるとは思ってもいなかったが、こうなったらいけるところまで行きたい。

途中、25kmや他のカテゴリーのランナー達と混走する場面もあるが声をかけあい、元気を分け合い、励まし合う。

30km過ぎたあたりから、左臀部に違和感が出始める。
それを皮切りに左右の腸腰筋、ハムストリングスに疲労のサインが出始める。

初50kmを最後まで楽にレースペースで走れるとは毛頭考えていなかったので、この違和感、痛み、疲労のサインが「真のスタート」と自分の中で割り切っていた。

今回特にキツかったのは、足裏の痛み。

岩や小さな石ころを踏むたびに痛みが走る。

前半は何も感じていなかったが、後半に入り、小石にも敏感になる程ダメージが来ていた。

スピードが遅くなるため避けていた深めの柔らかい砂地が逆に心地よく、最速の岩ラインを避けて、足裏にダメージが少ない砂地を走るようになった。

靴もソックスもクッションがあるものを選んでいるので、これはもう単純にまだ私の足が長時間のトレランに対して耐性ができていないだけ。

そして、月明かりが強くなると自分が持っているライトの弱さを感じ始めた。

ナイトハイキングにはとても良いライトだが、ランニングのスピードだと若干弱い。他ランナーのライトと比べても明るさが劣る。

その視界の悪さに加えて極度の疲労で足が上がらなくなってきているので、石につまづく回数が増え、転倒こそなかったもののヒヤっとする場面が幾度となくあった。これも実際に使ってみないと分からなかったのでとても勉強となった。

足首も何度か捻りかけたが、足首にニューハレ"Xテープ"を二重に貼っていて本当に助けられた。完全に捻挫していたら完走も出来なかったかもしれない。

最後の10kmループに入る40km地点。
まだ1位。

しかし、すでに身体は限界に来ていた。

止まりたいが、止まったら全身が攣って二度と動けないような気がしたので、どんなにゆっくりでもいいからとにかく前へ進み続けた。

そして、ここまで来たらどうしても勝ちたい。

情報がないので2位との差も全く分からない。

後ろにチラホラ見えるライトは2位の選手なのか、他カテゴリーの選手なのか判別はできない。

今することは決して止まらずに、前へ進み続けることのみ。

たった一歩足を地面についただけでも声が出そうな痛みが襲う。

でも、絶対に追いつかれたくない。

この時点で私の走力は終わっていた。

後は自分との精神力の勝負。

これが、ウルトラの世界の入り口なのか?!
(単にペース配分ミスかもしれないが(苦笑))

しかし、私にはMTBレーサーという強力なバックグラウンドがある。
このような修羅場は何度もくぐり抜けてきたつもりだ。

脚は限界だったが、幸い自転車で培った心肺機能は元気だ。

呼吸を力強く、素早く吸って吐いて、それに連動させて足のケイデンスを上げた。
呼吸で脚を動かし、走っているような新しい感覚。

ペースはジョギングだが、とりあえず走ることはできている。

ここまで補給は30分毎にジェル一個(100kcal)を摂取していたが、最後は20分毎にしてエネルギーをできるだけ注入。飲み物も計画通りの量を摂取していたのでエネルギー不足も感じなかったので補給はほぼ満点だったのではないだろうか。1時間あたり250kcal前後摂取。

もうすぐフィニッシュだと少し気を緩めたからか、
ラスト5kmあたりでまた新たな痛みが発生。

右側の横隔膜?腹直筋上部?その辺りが完全に攣ってしまった。
呼吸の度に悶絶の痛みが襲う。
頼りにしていた呼吸もうまくできなくなり窮地に立たされる。

でも、どうしても止まりたくない。

走りながら右腕を上げて身体を横に反ったり、なんとか伸ばすように試行錯誤する。

そこでハイドレーションベストの胸ストラップを外すと、少し楽になったような気がしたのでストラップは外してベストを手で抑えながらなんとか一番キツかった状態を脱出。

ひょっとしたらドリンクの揺れを抑えるために胸ストラップをキツく締めすぎていたのかもしれない。これも今後の参考になりそうだ。

心拍計も胸を締め付けるベルトタイプではなく、肌に直接貼る心拍計「Air Fit」を装着していて本当に正解だったと心から思った。

長時間の振動が自転車より多いぶん、身に着けるもの一つとってもストレスをいかに減らせるかがとても大切だ。

暗闇の砂漠に煌々と光るフィニッシュ地点が目に入る。
近づくにつれてノリノリの音楽も聞こえてくる。

身体の痛みが少し和らいでくる。

会場へたどり着くと歓声で迎えられ、両手を挙げて、フィニッシュゲートをゆっくりとくぐった。

優勝の歓喜
達成感
痛みの解放からの安堵

様々な思いが頭を一気に駆け巡る!

そこにMCから「日本から来たユーキ・イケダが優勝!」と嬉しいアナウンス。

インタビューで、今回が初の50kmで初ウルトラと伝えるとびっくりされたが、自分でも正直驚いたほどだ。

トレランではもちろん初優勝。
本業のMTBを含めても久しぶりの優勝。

どんな大会でも選手にとって優勝はやっぱり最高に嬉しい。
渇望していただけにこの勝利の味は格別だった。

それも今持てる力を出し切ったからこそ。
自分を超える戦い「超戦」をしたからこそ最高の味わいとなる。

もちろんすごく嬉しいのだが、今年の最大目標であるレッドヴィルでの100マイル(160km)レースへの道のりは改めて長く険しいと思い知らされる。

↓キロ毎のペース。
前半部と後半部で比較すると約35分も遅くなっている酷いペース配分(苦笑)。しかし、現状の走力でどこまであのペースで走れるかの試験としては大いなる学び。

ここから得られることは数え切れない。ピークを持っていくレースへの貴重なデータだ。

はっきり言って現状の走力では100マイル完走は怪しいだろう。

しかし、この未知のチャレンジに対する不安と興奮が同居するワクワク感が自分をさらに熱くさせてくれる。

超えなければいけない壁は確実に幾つも待っているが、成長と楽しみの予感しかない。

引き続き精進あるのみ。

たくさんの応援ありがとうございました!


 2位の人は疲弊しきっていたため早めに帰宅。出し切った証拠。走りきった全てのランナーにリスペクト。

ディレクターのノアさん。素晴らしいレースをありがとう!

アリゾナらしいトカゲの優勝トロフィー
フィニッシャーに贈られるグラス
初ウルトラ完走者に贈られるステッカー

私と共に50kmを戦ってくれた素晴らしいパートナー達。ありがとう。

ニューハレ:テーピング・ニーダッシュ(膝下)、Xテープ(足首)

GORE WEAR:R5スリーブレスシャツ
GORE WEAR:R7ショーツ
GORE WEAR:オプティヘッドバンド

AIR FIT:貼る心拍計

GU:ジェル&ドリンク