大会名:SDA in 王滝
開催地:長野県王滝村
開催日時:2017年11月19日
距離:約97km(積雪・寒波の影響により5周回コースへ短縮・変更)
タイム:5時間48分46秒
順位:3位
結果ページ:http://www.powersports.co.jp/sda/result.htm
9月大会が台風の影響で中止となり、代替レースとして開催された今大会。
今回も大寒波の影響で一時中止も考えられたが、コース変更という大会運営の臨機応変な対応のおかげで開催に至った。
しかしながら寒波の影響は大きく、コースには積雪・凍結あり、気温は常に氷点下という過酷な条件でまさにSDA(セルフ・ディスカバリー・アドベンチャー)な大会となった。
長距離レーサーの私にとって王滝はやはり外せない思い入れの強い大会。本来ならばシーズンを終えているこの時期にピークを持ってくるのは難しいところはあるが、今シーズン最後のレースということで有終の美を飾る気持ちでコンディションを合わせた。
当日。午前3時前に起床。
朝食は、お気に入りの天然酵母バゲット1本(タビタのパン)、バナナ、暖かい無調整有機豆乳に生ハチミツ、梅干し1個でお腹も心もしっかりと満たす。
外の気温は氷点下を大きく下回り、肌が痛いほど。防寒はシミュレーションを繰り返し、万全に用意。
服装準備の詳細は前回のブログ投稿を参考に↓
http://www.yukiikeda.net/blog.html#/detail/1419834184664914168
上記に加えた点は膝下にはニューハレテーピングのニーダッシュ。骨が出ている箇所で冷えを感じやすいのでテーピング効果に加えて防寒にも繋がる。
5時20分に会場へ行き、レースバイクの最終確認と軽いアップを行い、スタートへと向かう。念のために足元周りを中心に防水スプレーを散布。
装備も万全だが、心も熱いせいか、不思議と寒さは感じない。
日の出前でまだあたりは真っ暗。強めのライトを付けてきて正解だ。
午前6時。未知への大冒険がスタート。
スタート動画↓
https://www.facebook.com/PolarBearTrainersTeam/videos/1545785858845500/
By Polar Bear Trainer's Team
登り基調のパレードスタート区間ですでに身体は温まり始め、ジッパーを開けて体温調節をする。
ダート区間に入り、先導車が消えると一気にペースアップしてリアルなレースがスタート。いきなりのひどい凍結で落車が発生し、波乱のレースを予想させた。
宮津選手、岡本選手、私の3人の先頭集団が形成されてテンポ良いペースで登っていく。
標高が上がるにつれて雪が増え始め、コース上部は完全な雪上ライドとなる。凍結箇所もあり、集中力も高まる。今シーズン初めての雪ライドでレース中ではあるがウキウキして楽しんでいる自分がいた。
岡本選手に数秒遅れて2周目へ突入。足の調子も良い。下ったあとの登り始めは身体が冷えていて、温まり直すのに少し時間がかかる感じだ。多少先行されてもここは落ち着いて補給を取りながらマイペースでエンジンを掛け直した。
岡本選手が視界から消えない程度に捉えて単独2位で2周目の登りを消化する。下りで再び追い付けるように集中力を高める。
42kmクラス、1周目のライダーを抜きながら下るが、コーナーでインから膨らんできたライダーを避けるために選んだラインでミスを犯してしまった。
前輪が氷で滑ってしまい、左半身、特に肩を強打してクラッシュしてしまった。馬鹿な失態をした自分に怒りを覚えるが、しばらく痛みで悶絶。
「早くレースに復帰しないと!」とバイクに異常がないかをチェックする。バイクは幸いサイクルコンピュータのマウントが破損している程度だったが、左肩が思うように動かないことに気づく。肩を上げようとするとかなりの痛みと共に「ガコッ」と引っかかって上げることができない。
無我夢中で乗車するが、グリップに手を置けないほど痛い上に、上半身が支えられない。
これは、まさかの脱臼かもしれない。大学生の頃に亜脱臼を一度した経験がある程度なので困惑する。
過去に友人が自分で引っ張って治したという経験を思い出し、ハンドルに指を引っ掛けて腕を後方に思い切り引っ張ると2度目あたりで肩が元の位置に戻ったような感覚があった。肩を動かすとガコっという引っかかりが消え、痛みも多少和らいだ。その代わり肩甲骨あたりに痛みが移った感じだ。
とにかく乗車可能な状態に復活できたことに喜びレースを続行。
しかし、痛みはやはりある。加えて左膝・腰部分の打撲箇所、冷えた身体、落車の影響で下りのスピードに心のブレーキがかかり、前へ進みたい気持ちだけが空回りしてリズムが整わない。
明らかなペースダウンに何度も気持ちが負けそうになる。
パンクから復帰した宮津選手に抜かされる。さすがの力強い走りだ。
一緒に高め合ってトップを走る岡本選手に追いつきたいが身体が思うように動かない。
ボトルのスポーツドリンクすらも凍り付き、補給もうまくできない。
厚いグローブと悴んだ手だと補給食をバックポケットから取り出すだけでも至難の業。それでもなんとかジェルとバーを頬張り、エネルギーを補充し、士気を高める。
3周、4周はただただ耐えるだけ、辛いだけの時を過ごす。
コース上にいるライダーの方たちとの励まし合いでなんとか折れかける心を保つ。あまり反応できなく申し訳なかったが、声と元気をくれた人たちには心から感謝。
エイドで止まり、寒い中でスタッフの方が振舞ってくれていたお湯でボトルの凍ったドリンクを溶かし、お湯を補給。やっと飲めた暖かい水分が身体に染み渡る。ありがたい。
遅かろうが走れる限り、諦めることは絶対にしない。あと1周。自分にだけは勝とう。
亀の歩みのスピードだが、最終周回へ突入。トップの岡本選手からは約15分、2位の宮津選手からは4−5分も遅れているとの情報が入る。悔しいが、今はこの瞬間の全力を尽くすのみ。
レース終盤にかかり、雪も降り始め、気温がさらに落ちてきているように感じる。
バイクやシューズカバーに付いた泥水が凍結。氷はタイヤにも干渉し始め、変速もおかしくなり、チェーンも動きを止めるとすぐに凍りつく。チェーン落ちも頻繁に起こり、何度も止まり、氷を砕くという作業を余儀なくされるサバイバルなシチュエーション。
下りでもできるだけペダルを回してチェーンを動かし続け、シフトも動かして凍りつかないように心がけた。
ゴールまで5kmほどのところで4位にいた山中選手に追い抜かれる。ボロ雑巾のような状態だが、かすかに残った根性とチカラを振り絞り、置いて行かれないように山中選手の背中に付いていく。
肩の痛みも忘れるほどに再びアドレナリンが身体に溢れてきた。
自分でも驚いたが、まだ踏める。いける。
徐々に山中選手との距離を縮めていく。
ゴールまで残り2km程度。
辛いがこの緊張感とギリギリ感がたまらない。
やっぱりレースは面白い。
しかし、残り1kmくらいで山中選手がまさかのチェーン落ちのトラブル。
山中選手をパスして、ゴールまで踏み切ってサバイバルレースを3位でフィニッシュ。
優勝は、岡本選手。とても強かった。初優勝、心からおめでとう。
2位の宮津選手も序盤の落車とパンクトラブルがある中でも諦めずに力強い走りだった。
完敗だ。
レースが終われば笑顔でお互いを称え合う。最高のライバルであり、大切な仲間。
どうしても勝ちたかったレースだけに、落車のミスは情けなく、本当に悔しい。またやるべきことを積み重ねていちチャレンジャーとしてこの場に戻ってこようと心に誓った。
レースが終わるとホッとしたのか、アドレナリンが切れたのか、また落車した身体の痛みがジワジワとでてきた。
ゴール地点で的確に迅速に応急処置を施してくれたスタッフに感謝。
凍りつきながらも過酷なレースを共に戦い抜いてくれた愛車にも心から感謝。
今大会で私の長かった2017年シーズンは幕を閉じた。まずは怪我をしっかり治し、オフシーズンで来季への英気を養いたいと思う。
沢山の応援ありがとうございました!
池田祐樹
結果ページ:http://www.powersports.co.jp/sda/result.htm
9月大会が台風の影響で中止となり、代替レースとして開催された今大会。
今回も大寒波の影響で一時中止も考えられたが、コース変更という大会運営の臨機応変な対応のおかげで開催に至った。
しかしながら寒波の影響は大きく、コースには積雪・凍結あり、気温は常に氷点下という過酷な条件でまさにSDA(セルフ・ディスカバリー・アドベンチャー)な大会となった。
長距離レーサーの私にとって王滝はやはり外せない思い入れの強い大会。本来ならばシーズンを終えているこの時期にピークを持ってくるのは難しいところはあるが、今シーズン最後のレースということで有終の美を飾る気持ちでコンディションを合わせた。
当日。午前3時前に起床。
朝食は、お気に入りの天然酵母バゲット1本(タビタのパン)、バナナ、暖かい無調整有機豆乳に生ハチミツ、梅干し1個でお腹も心もしっかりと満たす。
外の気温は氷点下を大きく下回り、肌が痛いほど。防寒はシミュレーションを繰り返し、万全に用意。
服装準備の詳細は前回のブログ投稿を参考に↓
http://www.yukiikeda.net/blog.html#/detail/1419834184664914168
上記に加えた点は膝下にはニューハレテーピングのニーダッシュ。骨が出ている箇所で冷えを感じやすいのでテーピング効果に加えて防寒にも繋がる。
5時20分に会場へ行き、レースバイクの最終確認と軽いアップを行い、スタートへと向かう。念のために足元周りを中心に防水スプレーを散布。
装備も万全だが、心も熱いせいか、不思議と寒さは感じない。
日の出前でまだあたりは真っ暗。強めのライトを付けてきて正解だ。
午前6時。未知への大冒険がスタート。
スタート動画↓
https://www.facebook.com/PolarBearTrainersTeam/videos/1545785858845500/
By Polar Bear Trainer's Team
登り基調のパレードスタート区間ですでに身体は温まり始め、ジッパーを開けて体温調節をする。
ダート区間に入り、先導車が消えると一気にペースアップしてリアルなレースがスタート。いきなりのひどい凍結で落車が発生し、波乱のレースを予想させた。
宮津選手、岡本選手、私の3人の先頭集団が形成されてテンポ良いペースで登っていく。
標高が上がるにつれて雪が増え始め、コース上部は完全な雪上ライドとなる。凍結箇所もあり、集中力も高まる。今シーズン初めての雪ライドでレース中ではあるがウキウキして楽しんでいる自分がいた。
岡本選手に数秒遅れて2周目へ突入。足の調子も良い。下ったあとの登り始めは身体が冷えていて、温まり直すのに少し時間がかかる感じだ。多少先行されてもここは落ち着いて補給を取りながらマイペースでエンジンを掛け直した。
岡本選手が視界から消えない程度に捉えて単独2位で2周目の登りを消化する。下りで再び追い付けるように集中力を高める。
42kmクラス、1周目のライダーを抜きながら下るが、コーナーでインから膨らんできたライダーを避けるために選んだラインでミスを犯してしまった。
前輪が氷で滑ってしまい、左半身、特に肩を強打してクラッシュしてしまった。馬鹿な失態をした自分に怒りを覚えるが、しばらく痛みで悶絶。
「早くレースに復帰しないと!」とバイクに異常がないかをチェックする。バイクは幸いサイクルコンピュータのマウントが破損している程度だったが、左肩が思うように動かないことに気づく。肩を上げようとするとかなりの痛みと共に「ガコッ」と引っかかって上げることができない。
無我夢中で乗車するが、グリップに手を置けないほど痛い上に、上半身が支えられない。
これは、まさかの脱臼かもしれない。大学生の頃に亜脱臼を一度した経験がある程度なので困惑する。
過去に友人が自分で引っ張って治したという経験を思い出し、ハンドルに指を引っ掛けて腕を後方に思い切り引っ張ると2度目あたりで肩が元の位置に戻ったような感覚があった。肩を動かすとガコっという引っかかりが消え、痛みも多少和らいだ。その代わり肩甲骨あたりに痛みが移った感じだ。
とにかく乗車可能な状態に復活できたことに喜びレースを続行。
しかし、痛みはやはりある。加えて左膝・腰部分の打撲箇所、冷えた身体、落車の影響で下りのスピードに心のブレーキがかかり、前へ進みたい気持ちだけが空回りしてリズムが整わない。
明らかなペースダウンに何度も気持ちが負けそうになる。
パンクから復帰した宮津選手に抜かされる。さすがの力強い走りだ。
一緒に高め合ってトップを走る岡本選手に追いつきたいが身体が思うように動かない。
ボトルのスポーツドリンクすらも凍り付き、補給もうまくできない。
厚いグローブと悴んだ手だと補給食をバックポケットから取り出すだけでも至難の業。それでもなんとかジェルとバーを頬張り、エネルギーを補充し、士気を高める。
3周、4周はただただ耐えるだけ、辛いだけの時を過ごす。
コース上にいるライダーの方たちとの励まし合いでなんとか折れかける心を保つ。あまり反応できなく申し訳なかったが、声と元気をくれた人たちには心から感謝。
エイドで止まり、寒い中でスタッフの方が振舞ってくれていたお湯でボトルの凍ったドリンクを溶かし、お湯を補給。やっと飲めた暖かい水分が身体に染み渡る。ありがたい。
遅かろうが走れる限り、諦めることは絶対にしない。あと1周。自分にだけは勝とう。
亀の歩みのスピードだが、最終周回へ突入。トップの岡本選手からは約15分、2位の宮津選手からは4−5分も遅れているとの情報が入る。悔しいが、今はこの瞬間の全力を尽くすのみ。
レース終盤にかかり、雪も降り始め、気温がさらに落ちてきているように感じる。
バイクやシューズカバーに付いた泥水が凍結。氷はタイヤにも干渉し始め、変速もおかしくなり、チェーンも動きを止めるとすぐに凍りつく。チェーン落ちも頻繁に起こり、何度も止まり、氷を砕くという作業を余儀なくされるサバイバルなシチュエーション。
下りでもできるだけペダルを回してチェーンを動かし続け、シフトも動かして凍りつかないように心がけた。
ゴールまで5kmほどのところで4位にいた山中選手に追い抜かれる。ボロ雑巾のような状態だが、かすかに残った根性とチカラを振り絞り、置いて行かれないように山中選手の背中に付いていく。
肩の痛みも忘れるほどに再びアドレナリンが身体に溢れてきた。
自分でも驚いたが、まだ踏める。いける。
徐々に山中選手との距離を縮めていく。
ゴールまで残り2km程度。
辛いがこの緊張感とギリギリ感がたまらない。
やっぱりレースは面白い。
しかし、残り1kmくらいで山中選手がまさかのチェーン落ちのトラブル。
山中選手をパスして、ゴールまで踏み切ってサバイバルレースを3位でフィニッシュ。
優勝は、岡本選手。とても強かった。初優勝、心からおめでとう。
2位の宮津選手も序盤の落車とパンクトラブルがある中でも諦めずに力強い走りだった。
完敗だ。
レースが終われば笑顔でお互いを称え合う。最高のライバルであり、大切な仲間。
どうしても勝ちたかったレースだけに、落車のミスは情けなく、本当に悔しい。またやるべきことを積み重ねていちチャレンジャーとしてこの場に戻ってこようと心に誓った。
レースが終わるとホッとしたのか、アドレナリンが切れたのか、また落車した身体の痛みがジワジワとでてきた。
ゴール地点で的確に迅速に応急処置を施してくれたスタッフに感謝。
凍りつきながらも過酷なレースを共に戦い抜いてくれた愛車にも心から感謝。
今大会で私の長かった2017年シーズンは幕を閉じた。まずは怪我をしっかり治し、オフシーズンで来季への英気を養いたいと思う。
沢山の応援ありがとうございました!
池田祐樹
〜超戦〜
TOPEAK ERGON RACING TEAM USA
レース中機材・装備:
タイヤ: MAXXIS IKON 2.2 (F&R), 前後20PSI
パーソナルスポンサー:
チームスポンサー: