開催日時:7月17日
場所:長野県王滝村
結果:DNF(第二関門54km地点で途中棄権)
御嶽山の麓に位置する自然豊かな王滝村は、アウトドアスポーツ愛好家には聖地としても知られている。
特にマウンテンバイカーとトレイルランナーでは知らない人はいないだろう場所だ。
国内最大級の長距離MTBレース「SDA in 王滝」では私も優勝を争い、初出場の2012年以来数えきれないほどの激戦を繰り広げてきた。
しかし、今回はトレイルランという違った種目で初挑戦。
まさかマウンテンバイク以外でこの王滝村で100kmを走る日が来るとは思ってもいなかったが、王滝村の大自然を二倍楽しめるというのはとてもお得な気がする(笑)。
100kmスタートはなんと夜中0時スタート。
普段熟睡している時間にスタートコンディションを合わせるのは初めてだったが、とても良い経験となった。
お昼をしっかり食べて午後4時ごろから仮眠を試みたが興奮しているせいか眠りにつけず、結局目をつむり、横になっただけだった。それでも起きているよりは身体を休めることはできただろう。
8時ごろに宿で用意してもらったおにぎりを4個とお味噌汁を美味しくいただいた。
数日前から雨が多く、レース当日も雨脚がかなり強く、コースの荒れ具合が気になるところ。
恐縮ながら選手代表として安全の祈祷儀式を受けさせていただいた。
夜中で眠いはずなのに、レースの高揚感のせいで変にテンションが高い。
午前0時。
長く険しい100kmのアドベンチャーの火蓋が切って落とされた
先導車の後に続き、先頭集団の中で程よいペースで進んでいく。
序盤は平坦基調の舗装路ということもあり、徐々に集団のスピードがあがっていく。
キロ4分ペースくらいまで上がると練習でも走らないスピードなのでさすがにきつくなってくる。
慣れないスピード域と舗装路のせいか、足底に嫌な違和感が出始めた。
痛みには至っていなかったのでそのまま集団ペースに身を任せた。
登りに入っても先頭集団のペースは落ちない。
なんとか着いていこうとするが少しずつ離されていく。
ロード走力が未熟な今の自分にはかなり辛い展開だ。
最近のトレイル系レースでは結果が良かったので、
ある程度走力もレベルアップしているかも?
という淡い期待もあったが、現実はそんなに甘くはなく
その期待は瞬時に打ち砕かれた。
やはり練習は正直だ。
当たり前のことだが、やってないことはできない。
現実を受け止めて、腐らずに現状のベストを尽くすことが今自分の最大限できること。
しかしながら皆とても強い!
私も決して遅いペースではないと思うが、どんどん抜かれていく。
抜いていく人たちに必死に着いていこうとするが千切られっぱなし。
トレイル無し、林道と舗装路のみというONTAKE経験者の話しを聞き、
私の苦手な「走れるコース」ということはわかっていたが
どこかで「対応できるだろう」という過信があったのだろう。
自分の弱さと情けなさに心がネガティブの渦に引き込まれていく。
追い討ちをかけるように足底の違和感が徐々に痛みと変わっていく。
足底筋膜炎にはトレランを本格的に始めた2019年からずっと悩まされていて、休養とリハビリを繰り返しながらなんとかトレランを続けていた。今年はようやく痛みが出ずに良い感じになっていたところだった。
なぜこのタイミングで痛みが?!しかもなぜか両足!?
雨などの悪天候レースは基本嫌いではないが、痛み+自分のダークサイドと戦いながら夜中に雨に当たり続けていると流石に気が滅入ってくる。
そんな中、ようやく第一関門(25km地点)がもうすぐという看板が目に入り、少しほっとする。
走りながらドリンクパウダーを空になったフラスコへあらかじめ入れてエイドでの補給時間を短縮。
エイドには水、バナナ、オレンジが用意されていたので、好物のバナナを二切れほどと水分を摂取。
スタッフの方達の温かい声援とサポートに元気をいただき、挫きかけていた心が救われた。感謝。
ここまでは平均ペースはキロ6分半くらい?でこの脚の状況を考えると思ったほど悪くはないが、正直このペースをキープできる自信はなかった。
痛みが少ないフォームを探したり、なんとか前へ進むために試行錯誤しながら、歩きは避けて、亀のスピードでも走ることを心がけて前へ進んだ。
しかし35kmあたりから、足底の痛みがさらに強くなり(特に下りと平坦)、ついに歩きを混ぜなければいけない状況になってしまった。
「進み続けていれば復活する時がくるはずだ」
そう信じて歩いては小走り、また歩いては小走りを繰り返して
ひたすらに復活の時を信じて耐え忍んだ。
42km、だいたいフルマラソン距離を過ぎたあたり。
その復活の希望も敗れ、症状はさらに悪化して地面に足をつけるだけでも痛くなってしまった。
さらに足底をかばいながら走ったせいか膝にまで痛みを感じる始末。
完走どころか果たして次の関門「松原スポーツ公園」まで辿り着けるのか?
歩いては少し休み、ストレッチを繰り返しながら、これからのことも考えて悪化をしないようにナメクジ並みのスピードで歩を進めた。
抜き際に声をかけてくれる選手の方達の「大丈夫ですか?まだいけますよ!」「祐樹さん頑張れ!」などの多くの言葉に励まされながらなんとか心を保つことができた。
ありがとうございました。
横歩き、後ろ歩きなど、痛みが減るかいろいろ試し、自分の身体と心とディープな会話をしながら54km地点の関門にようやく到着。
第二関門
これ以上無理すると怪我がさらに悪化すると判断し、途中棄権をオフィシャルに告げ、タイミングチップを返却した。
冷静に考えれば当たり前の判断ではあると思うが、
途中で辞める辛さは想像以上に受け止め難く、消化にかなりの時間を要した。
(正直現在もまだ消化不良・・・。)
今回の足底筋膜炎再発の原因も結局は身から出た錆。
己の弱さと過信からきたもの。
ざっと考えられる要因:
1、序盤から慣れない固い舗装路面で練習でやってもいないスピード領域で無理してそのまま走り続けたこと。
2、それにより無理したフォームになったことで足底に負荷がかかり過ぎた。
3、絶対的な走力不足。
4、この距離の林道コースを走るための圧倒的な練習不足。
少なくとも3、4はわかっていたので、序盤から普段のジョグペースで無理をせず完走できるレース運びをするべきだった。
トレイルランはコースによって全く別種目と言っていいほど求められる能力が変わるのも面白い。
私のようなトレイル向きランナーもいれば、走れるコースを得意とする人もいる。さらに距離によっても得意不得意が生まれる。
私の今年の例でいうとトレイル率が多い「OSJ 新城ダブル64km」10位と「OSJ 山名温泉80km」3位と良い感じにきていたが、今回の走れるコース「OSJ ONTAKE 100km」では完走すらできなかった。
一般的に走り辛いとされるコースを得意とする点がMTBと共通しているのは興味深い。
だからこそオールマイティにどんなレースコースでも上位に入る選手は本当にすごいと思う。
もちろん私もオールマイティに強くなりたい気持ちはあるが、自分の「好み」はやはりトレイル率が高いレース。
適正とモチベーションを見極め、レース選びをしていく必要もあることを今回のレースを通して学んだ大きなことの一つだ。
自分の特性に合わせたレース選びはとても大切だが、それを超えて抑えられない気持ちもある。
苦手云々は抜きにして今回のDNFは単純に超悔しい。
そして大好きな王滝村での大会をフィニッシュすらできなかったことも超悔しい。
いつか必ず戻ってきてしっかりとリベンジを果たし
笑顔でフィニッシュしたい。
コロナ対策、コース変更、悪天候の中で大会を3年ぶりに再開催してくれたパワースポーツ、ボランティアスタッフ、王滝村の皆様には心から感謝。
いつも大きなサポートと応援してくれているスポンサー、仲間、家族にも心から感謝。
ありがとうございました。
池田祐樹
超戦
使用装備