開催日:2022年3月27日
開催地:愛知県新城市
天候:晴れ
結果:10位/11名完走(48人出走(総合))、2位(40代男子)
タイム:10時間30分03秒
距離:約64km
獲得標高:約5224m
昨年32kを走って大好きになった新城トレイル。今年は64kへ初チャレンジ。
今シーズン最初のビッグレースとして臨んだ今大会。
今回の私の目標は「まずは完走」。
これだけ聞くと甘い目標と思われるかもしれないが、このダブルのカテゴリーは国内でも最難易度のミドルレースと言われ、トップ選手にとっても過酷なコース、そして超厳しいタイム制限(11時間)が設けてあるのだ。
参戦資格は「新城トレイル32k」で5時間以内に完走すること。
これも決して容易ではない。私は練習を積んで昨年4時間22分でフィニッシュし、ボロボロになりながらもダブルへの挑戦権を獲得した。昨年のフィニッシュ時の写真↓
過去のダブル64kのリザルトを見ると、名だたるトップ選手もタイム関門に間に合わなかったり、途中棄権したり、トップ選手しか出ていないにも関わらず完走率20%を下回るなど、その難易度の高さを物語っている。
それを見て恐れる気持ちもあるが、それ以上にやる気とモチベーションは爆上がり。
やはり、チャレンジングなレースの方が心が踊るのだ。
2018年から本格的に始めたトレラン。MTBとトレラン両種目でトップレベルで戦えるようになるのが目下のゴール。
まだまだトレランは経験年数も浅く、改善点ばかりだが、この「新城トレイルダブル64k」を完走することは自分の中で、トップ選手の仲間入りするための登竜門的な位置付けにあった。
なので初挑戦でもなんでも、意地でも完走してみせる!という気持ちで臨んだ。
錚々たるメンバーと肩を並べながらスタートに並び、スタートの合図を待つ。沿道の観客も多く、テンションがどんどん上がる。MTBと同様、スタート直前のこの緊張感と高揚感が入り混じる感覚がたまらなく好きで興奮する。
まだまだ余裕の表情を見せるスタート直後。
先頭集団の後方でトップ選手の走りを観察しながら冷静に進んだ。
何よりトップ選手たちと一緒に走れることは何事にも変え難い経験だ。
そして、この新城トレイルのコースはアップダウンが超激しく、キツいけれど、その分変化に富んだとても面白いレイアウト。
冒険心掻き立ててくれる、ワクワクなトレイル天国だ。
徐々に序盤のハイペースのダメージが蓄積し始め、1周目後半で既に脚が攣り始めてしまった。
今回シューズはALTRA OLYMPUS4をチョイス。決して軽量ではないが、ALTRAトレイルシューズの中では一番のクッション性と安定性を誇る。新城ダブルの長く険しい本格山岳コースでは軽さよりも少しでも足に負担が少ないシューズ選択をしたが、これが大正解だった。
クッションが少ない軽量シューズを選択し、今よりもっとダメージを受けていたかと思うとゾッとするほどだ。
1周目はなんとか約4時間35分でコンプリート。
笑顔だが、実は脚は攣りまくっている。
ピットゾーンでは、補給確認、ゴミ捨て、ライトなど忘れ物ないかのチェック、擦れ防止のクリームを塗ったり、時間をかけた。
予想外の暑さもあり、水分も補給も多めにパックに詰め込む。
ダメージは確実にあるが、心はまだまだ元気だ。この脚でこれからあの過酷な山岳コース32kmを走り切れるのか?
不安しかないが、前に見える選手たちも苦しんでいる様子。
皆も必死に戦っていると思うと落ち込んでいる場合ではない。
とにかく前へ進もう。
1周目で颯爽と走れた箇所もほとんど歩き、斜度の変化があるたびに脚が攣り、悶絶の痛みに耐えながら亀の歩みで進んだ。
次第に貯蓄していたタイムも底がつき始め、関門を通り過ぎるたびに緊張感が増してきた。
MTBの経験だと、足の攣りはペースを落とし、補給をして、時間が経てば落ち着くのだが、今回はどうやっても落ち着かない。ほぼ攣りっぱなしで3時間以上、痛みと戦いながら走っている。
水補給ポイント↓
スタッフの皆様には感謝しかない。
疲労に加え、予想外の暑さも加わり、頭も朦朧とし始めてくる。途中にある沢で水浴びをして体を冷まして、意識もリフレッシュ。
永遠にも感じた宇連山の登りを越え、棚山へと下りる。
前日までの大雨で道は泥々で足首まで埋まるほどぐちゃぐちゃな箇所もあった。
スピードも出せず、このままでは本当に制限時間に間に合わないかもしれない。頭の中に「DNF」がよぎり始める。
最後から2番目のタイム関門、棚山高原に約13分前に到着。
エイドで水を補給し、脚をストレッチしていると、後方から女性トップ選手の秋山穂乃果選手が追い上げてくる姿が見えた。
正直、次の最終関門には距離と脚の状態からして間に合わないと半分諦めていたところだった。
しかし、秋山選手の集中した力強い走りに感化され、もう一度頑張ろうと喝が入り、走り出すことができた。
まだ自分に走る力が残されていたことに驚いた。
宇連山分岐箇所手前で秋山選手に抜かされてしまったが、秋山選手が後ろから来ていなかったら棚山で諦めてしまっていたかもしれない。ここまでもう一度奮起することができなかっただろう。
抜かれた悔しい思いはなく、とにかく感謝しかなかった。
おかげで最終関門にはタイム制限9分前に滑り込むことができた。
身体の限界はとっくに超えていることもあり、ここからフィニッシュまでもかなり辛い道のりだった。
フィニッシュが見えてきてようやく完走できることを確信。
ここまで限界を超えて追い込んだ今回のキツい経験は人生トップ5には入るだろう(苦笑)。
STRAVAやレース結果を見ると後半のつぶれ具合は決して誉められたものではなかったが、最後まで本当に諦めなくてよかった。
2周目はとにかく辛く、長かったが、これほど自分と真剣に向き合った経験はかけがえのないものとなるだろう。
この新城トレイルダブルを完走した経験は必ず次のステップへ生きるだろう。
強者のみがスタートしたレースなのに完走者はたったの11人。
まさにサバイバルレースだった。
優勝した長田豪史選手、秋山穂乃果選手、おめでとうございます。心からリスペクト。
40代2位の表彰台↓
応援してくれた家族、仲間、サポーター、大会運営スタッフの皆様、そして最後のセクションで力強い走りで喝を入れてくれた女性唯一の完走者の秋山穂乃果選手(もちろん女性カテゴリー優勝)、ありがとうございました。
そして、この長い戦いを一緒に走ってくれた信頼のアイテム達にも心から感謝。
〜レース装備〜
シューズ:Altra Olympus 4
ウェア:Teton Bros.
テーピング:New HALE(足首Xテープ2枚, 膝ニーダッシュ)
補給:GU Energy, Challenger
あんなにも辛いレースをしたのに、時が経って今思うことは「またあのワクワクするトレイルを思い切り走りたい」という気持ち。
池田祐樹