2017年6月29日木曜日

UCI MTBマラソン世界選手権大会レポート

大会名:UCI MTBマラソン世界選手権
大会ウェブサイト:
http://www.hegau-bike-marathon.de
開催地:ドイツ・ジンゲン
開催日時:2017年6月25日
結果:147位
距離:98キロ

レースデータ:Strava
レース時間:4:05:20
総獲得標高:2642m
TSS:293


年に一度の世界選手権の舞台。

スポンサー、推薦してくれた方々、仲間、家族の協力なしにこの世界選手権のスタートには並べなかった。感謝しかない。

コース路面は舗装路が多く、オフロード区間も整地された農道やカットされた芝などでかなりのスピードコース。登りは長いものはなく、細かい急坂が繰り返されるショートヒルインターバル的。

 農道が続くコース(試走時)

重く滑る芝の急勾配区間(試走時)


スピード&パワーコースに合わせてバイクはハードテール「Canyon Exceed CF SLX」を選択。



タイヤもスピードを重視したチョイスで、フロントに軽量かつ転がり抵抗が低いマキシス・アスペン TR仕様。


リアには転がり重視のセミスリックタイヤのマキシス・トレッドライト EXO TR仕様を装着した。


日本で自転車コーキ屋さんにて万全に調整をしてもらい、現地でもチームメカニックに最終調整をしてもらい、機材に一切不安はなくスタートに並ぶことができた。

スタートは182番手でほぼ最後尾。UCI規定ポイントレースを追わなかった私のレース選択の結果なのでここは受け止めるしかない。

体調は悪くない。足の調子もウォームアップでは良い感じだ。
あとは後方からどのようにして順位を上げていくか。頭の中でいくつものシチュエーションを想定しては繰り返しシミュレーションした。

当日の天候は、基本曇りの予想だが晴れ間がでるだけで酷暑となるので補給プランも入念に、水分、電解質は多めに用意。


10時20分。スタートと共に猛烈なダッシュがかかる。ショートレースと全く変わらないレッドゾーンペースだ。後方はコーナーの度に詰まってダッシュをするので、できるだけペースの緩急をなくし、コーナーの出口で加速できるように冷静にブレーキングを行った。

スタートしてすぐにある狭いトンネル入り口で、予想はしていたが落車が発生した。真横で数台こっちに倒れこんできて私自身は支障がなかったが、バイクの後輪部分に人とバイクが倒れこんできた。

このアクシデントでディレラーハンガーが内側に曲がったか。変速するとカセットの内側にチェーンが落ちそうになる。

すぐさまバイクから降りて手の力でハンガーを外側に曲げ直した。幸運なことにこの応急処置でシフティングはほぼ正常に戻った。

しかし、この一瞬のトラブルでもレース序盤では命取りだ。周りにはほぼ選手はいなく、集団から切り離されてしまった。ロードレースのような集団の展開と戦略が必要な今回のコースでは非常に厳しいスタートとなった。

それなりに大きい集団に追いついたが、そこからのペースが上がらない。一人で飛び出すが、ソロでは前の集団に追いつけず、結局また吸収される。全ての坂でVO2MAXから無酸素域で追い込むが、位置取りはほぼ変わらず、もどかしい展開が繰り返される。

無理に追い上げる作戦を変更し、短いアップダウンだと飛び抜けにくいので、そこは集団に落ち着き足を溜めて、比較的長い登りに絞って追い込んだ。少しずつだが前へと上がっていく。体の反応は悪くない。

順位は1〜5人ずつ程度だが、着実に抜いていく。途中160番代と聞いてショックを受けかけるが、「スタート位置よりは地道に上げている」とポジティブ思考へと自分を鼓舞する。ネガティブになっている暇など無い。

©Norbert Mayer

やることはシンプル。腐らず、目の前のベストを尽くす。それだけだ。

レース中盤から日が出てきて一気に気温が上昇。そして、風も強くなり始めて単独走行のデメリットが強くなってくる。

2周目に入ると、選手もまばらになり、1周目に飛ばした選手達が落ちてくるのを躱していく。単独での走行がメインとなり、辛い面もあるが、抜いていくことでモチベーションを上げていく。

舗装路の急勾配の登り区間では日の丸に励まされた。試走時に補給のために寄ったスーパーで会った現地の方が用意し、応援してくれた。心から感謝だ。
©Norbert Mayer

各国の代表が集まっているので、基本は皆すごく強い。もっと早く順位をジャンプアップしたいが現状では1人ずつ抜いていくのがやっとだ。

全力を出しつつも、冷静に効率的にレースを進めないと前へは上がっていけない。

ラインが二つあったり、広い道(オフでもオンロード)では少しでもスムーズなライン選択を意識。砂利や芝の路面などはラインが見えるところが必ずしも最速ではない。試走時の情報、そして1周目の状況で2周目のラインを最適化する。フォーク上部に手を置き、少しの時間でもエアロポジションを取る。1秒でもタイムを縮めるために、呼吸を整えるポイント、補給を取るタイミング、無駄のないように行う。

ラスト10km地点あたりで追いついたフランス選手とペースを上げあって、終盤の局面で集中力をさらに高める。

現状の力を振り絞り、フィニッシュゲートをくぐった。

147位。

スタート位置よりは良いという程度。必死にもがいたが完敗だ。

スタート位置が〜、落車が〜、などは理由にならない。単なる力不足。
本当に強い選手は番号後ろでもかなり前の順位で終えている。

世界選手権での順位やレベルは開催国、年度、コースによっても大きく変わるが、2014年の自分の世界選でのベスト順位の51位(南アフリカ)、一昨年82位(イタリア)、昨年104位(フランス)からかなり下がっている。

自身のフィジカルのレベルは年々上がっているが、マラソン競技・世界全体のレベルアップのスピードに対応できていない。

その事実は真摯に受け止めるしか無い。

トピーク・エルゴンチームメイトでもあるアルバン・ラカータ選手は、世界でたった一人しか座ることが許されない王者の椅子を奪還した。

レース翌朝彼と会話を交わした時の表情は今までに見たことがないほど穏やかで、それまでの苦労や苦しみが全て報われたと言っていた。

持って生まれた天性のものもあるだろうが、
アルバンは、自分の全てを懸けて、もがきにもがいたに違いない。

私も必死にもがいたが、勝負の世界は厳しい。

結果というものが付き物で、相対的な評価が数字で示される。

だからこそやりがいもあるのだと思う。

私もまた、全てが報われたと言えるように、結果を残したい。

たくさんの応援・サポートありがとうございました。


池田祐樹
〜超戦〜
TOPEAK ERGON RACING TEAM USA
レース中機材・装備:
バイク: Canyon  EXCEED CF SLX チームエディション
フォーク・リアショック:Rock Shox RS-1Monarch XX
ブレーキ:SRAM Guide Ultimate
ドライブトレイン:SRAM XX1, フロント34T
タイヤ: MAXXIS ASPEN TR (F), MAXXIS TREADLITE TR EXO(

R): 前後18PSI
シーラント:Stan’s NoTube Race Sealant
グリップ: Ergon GS1
グローブ: Ergon HM2
サドル:ERGON SMR3 S Pro Carbon
ペダル: Crank Brothers Eggbeater 11
ヘルメット: Limar
工具・サドルバッグ・ボトルケージ: Topeak
チェーンオイル:Finishline
補給食:GUパワーバージェル&VESPAプロSayako’s Kitchen
ソックス:C3fit 
テーピング:ニューハレ
ケーブル/ワイヤー:JAGWIRE
ヘッドバンド:Halo II (ヘイロ II) プルオーバー
チームジャージ:Primal Wear